Porsche 964 Carrera Ⅱ 1993年式 3.6l NA(2WD) サーキット仕様車

  • オーナーの依頼により、ターボチャージャーを取り付け、サーキット走行でのタイムアタックが出来るようにパワーアップしました。
    ノーマルでは250PS/31.6kgf・m。
    馬力だけ見ればS15シルビアやS2000と同じ数値ですが、トルクは1.5倍ほどあります。
    そのため、乗りやすくて速い車なのですが、サーキットではちょっと物足りない。
    そこで、TRUST製 T78-33Dタービンを搭載することにしました。
    その気になれば600PSオーバーも出せる高性能タービンですが、今回は耐久性と扱いやすさを考慮して、パワーで420PS/トルクで56Kgf・mと若干控え目に仕上げました。
    しかし、大排気量車ならではのトルク特性の良さから、とてもパワフルかつ乗りやすい車に仕上がっています。

    ※400馬力級とはいえ、国産ターボのブーストアップ400馬力仕様とは比較できないほどパワフルです。

    この様にパワーを上げても壊れないのは、エンジン各所の耐久性を上げているのも勿論のことながら、エンジンマネージメントシステムにMOTECを用いることで、緻密なエンジン制御が実現できるからです。
    また、ビッグタービン仕様の宿命ともいえる「ターボラグ」を解決すべく、ミスファイアリングシステムを用いることで、アクセルOFF時のブーストの落ち込みを無くし、さながら大排気量のNA車のような扱いやすさを実現しています。
    ミスファイアリングシステムの制御もMOTECで行っています。


  • 増大したパワーを受け止めるべく、タイヤサイズも前265/35R18(10.5J)・後295/30R18(13J)までアップ。
    サイズアップしたタイヤを納めるべく、オーバーフェンダーキットを取り付けたことにより、同型のポルシェターボよりもさらにワイドなボディーになっています。

     



    ターボ化に備えてエンジン内部に加工を施すついでに、若干のリフレッシュ作業を行いました。
    多少のカーボンは付着していますが、燃焼状態は良いようです。
    シリンダー周りにウォーターラインがないため、シリンダー周りはコンパクト且つシンプルです。
    空冷エンジンならではの作りですね。

    リフレッシュ作業と同時に、まずはピストンを取り出して頂部を加工します。
    これにより、圧縮比を11.3:1→8.2:1に引き下げます。
    元々がNAなので、圧縮比を下げておかないと、ハイ・ブーストに耐えられませんからね。

     



    ついでにピストンリングも交換します。
    930型と違い、964型になってからはオイル漏れが少ないですね。
    M64/04型(964RS/Rに積まれていたエンジン)のピストン&ピストンリングを流用したいところですが、予算上の都合から、今回は使用しませんでした。

    ※この964CarreraⅡ(MTモデル)のエンジンはM64/01型

     



    このM64型エンジンはツイン・プラグシステムという特殊な点火システムを持っています。
    これは、燃焼室が広いため、点火時に均等に燃焼できるように1つのシリンダーにプラグが2本ずつ付いています。

     



    プラグが二本ずつ付いているので、デストリビュータも2つあります。
    この2つのデスビで各シリンダー内の2本のプラグに高圧電流を配電しています。
    つまり、6気筒×2本のプラグ=12本のプラグコードが必要なわけです。
    今回のように、エンジンをおろした状態なら良いのですが、エンジンを積んだまプラグコードを交換するのは、大変な作業です・・・

    点火順序は1→6→2→4→3→5となります。

     



    ターボチャージャーの搭載作業に入ります。
    この車種には、いわゆるタービンキットの設定等は無いので、搭載位置/パイピングの引き回し等を考えながら製作を進めていきます。
    こういった作業こそ、オートハウスの最も得意とする分野の一つです。
    まずは熱対策や、吸排気効率を考えながらT78タービンの搭載位置を決めにかかります。
    とは言うものの、搭載位置に関してはあまり選択の余地はありません。
    そのため、964型3.6LターボSと同様に、運転席側(左側)リアフェンダー内に仮固定します。
    タービンの前後左右に、適度なスペースも確保できて良い感じ。
    しかし・・・まさかリアタイヤの後ろにこんな大きなタービンが入っているとは誰も想像しないでしょうね。

     



    取り付け位置が決まったところで排気系パイピングの取り回し作業にかかります。
    今回は純正のEXマニホールドを流用する予定なので、それに合わせて80φのステンレスパイプでタービンのアウトレットパイプを製作しました。

     



    綺麗でしょ?
    今回は純正のEXマニを流用しましたが、今後は様子を見ながら等長のEXマニを製作する予定です。
    EXマニを等長にすれば、トルク特性も音も良くなりますからね。

     



    EXマニに続き、ウエストゲートの取り付けにかかります。
    これまた大変な作業。
    なにせ作業スペースが狭いのなんのって・・・
    しかし、この手の作業は当店の得意分野!
    タービンからウエストゲート周りのレイアウトもこんな感じに仕上がりました。

     



    すべての熱対策を終えたのち、バラしたパーツを組み上げて完成です!
    これでタービン一式がリアフェンダー内に収まりました。
    しかし、まさかこんなビッグタービンが、こんなところに隠れているなんて誰もわからないでしょう。せ作業スペースが狭いのなんのって・・・
    しかし、この手の作業は当店の得意分野!
    タービンからウエストゲート周りのレイアウトもこんな感じに仕上がりました。

     

    出来上がったエンジンがこちら。

     

     

     



    TRUST製の汎用のコアを使用して、大型のインタークーラーを作成し、エンジン上部に取り付けたため、エンジンがほとんど見えなくなってしまいました。

     

     



    エンジンが完了したら次はセットアップ作業です。
    もちろんセットアップはMOTECで行います。
    A/F計を取り付け、実走状態をモニタリングしながら燃調・点火マップを詰めていきます。
    安全マージンを確保した上で、いよいよ実走行でセッティング。

    これこそが「パワフルで速くて乗りやすく、かつ壊れない車」を作る最大のポイントですね。

     



    内装です。

     

     

     

     



    外観です。

     

     

     

     



    大迫力のリアウィング。
    一見して2本出しマフラーのように見えますが、片側一方はウェストゲートの排気用です。

     

     


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